アメリカー戦争をする国の人びとーを観た

戦争大国といえるアメリカの各地を渡り、200日間をかけ撮影されたドキュメンタリー映画。5プログラム、全494分のうちの2プログラムを東中野ポレポレ座にて観ました。

監督 藤本幸久 企画制作 森の映画社 カラー/ビデオ 
2009年 494分

高校の授業で、アメリカの軍事費をクッキー40枚に換算するとしたら、ほかの国の軍事費はクッキー何枚分か?という問いかけを生徒にしていたが、ロシアは4枚、中国は2・5枚、悪の枢軸といわれる、北朝鮮イラクリビアは3国あわせて1枚。
そんな開きがありながら、アメリカって国は何を脅威というのだろう。

アメリカ人兵士の募集には、就職手当2万ドル、さらに奨学金が7万ドル支給されるというのが、誘い文句。その札束をちらつかせるようなやり方が何ともやるせない。

各地でインタビューを受けるアメリカの人々は、入隊してからの過酷さ、生命、身体に加え精神面での人間性を奪うような凄惨な戦闘の現場、大切な家族を失った人たちの癒しようもない深い悲しみなど、心のうちを吐露していく。その思いは万国共通。一般の人は戦争を望んでなんていない。国家という権力によって戦わされ、いつも被害を受けるのは民間人、一般の人々なのだ。それは、いつの世も、どの戦争も変わりない。大義も正義も権力をもつ側の都合にすぎない。

それにしても、兵士になることが貧しさから脱出するための唯一の方法とかいわれて、それにのってしまうというのは、どういうことなんだろう。その先にある、人を殺す行為にかかわっていくということと、自分の人生や家族に大きなダメージを与える危険性が高いということを、入隊する時点で、それほど考えていないといういうことだろうか。それとも、それを承知で、あわよくば人を殺さず、お金をもらって生還できるとでも考えているんだろうか。入隊は強制ではなく、自分の意思で行われているのに。

2度目の派兵を拒否した後、軍をやめ、軍隊の実態を若者に語ることを、使命として「軍隊で戦うことは決して栄誉でもなんでもない」と高校生たちに語る男性、ブッシュ大統領がテキサスの牧場にかえってくる時をねらって、抗議をしにおしかけるピンクポリスと称する女性と子ども。軍のリクルート事務所に「CLOSED」のはり紙をして回って、逮捕をされるおばあちゃんたち。なんとか戦争をすること、兵士になる不幸を減らそうと行動している人たちもいる。

人々の精神も肉体も壊していく、アメリカ軍の戦争。それはアメリカの国土をも汚していっている。メキシコ系の住民が多数住む、サンアントニオ市にあるケリー空軍基地。そこでは、核爆弾も扱われているようなのだが、周辺住民はがんや白血病などの健康被害に苦しめられているのだという。

戦いをやめない国アメリカ、どうしてやめられないんだろう、まずは、軍備を縮小していく方向にできないなんだろうか。そんな自分の中の素朴な問いかけを胸に、あと3プログラムは、上映期間の4月16日までの間でまた分けて観に行こうと思います。